ドイツ・ケルンの食品展示会「ANUGA」の出展・視察レポート
こんにちは、さっぽろ産業振興財団です。
アワベス*では、2023年10月7日から11日にかけてドイツ・ケルンで開催された世界最大の食品および飲料の展示会「ANUGA」での視察を行いました!
今回の記事では、展示会視察を通じて現在世界ではどのような食品が注目を集めているのか、消費者は何を求めているのか、そして私たちがEU進出において学ぶべきことは何かなど、展示会での印象や気づきを共有し、食品業界の最新動向についてお届けします。
(2023年10月時点の情報を元にレポートしています。)
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食のEU圏進出コミュニティ「OUR BEST FOODS! FROM SAPPORO」を発足しました
Contents
展示会「ANUGA」について
ANUGAは、2年に一度ドイツ・ケルンで開催される世界最大規模の食品展示会です。食品業界における最新のトレンド、製品、技術、および革新に焦点を当てており、食品業界のバイヤーやビジネスリーダーに向けて開催されています。
展示カテゴリーには、肉、魚、乳製品、パン、ペストリー、冷凍食品、オーガニック製品、ベジタリアン/ヴィーガン食品、飲料、スナック、調味料、調理技術、および包装などが含まれます。
今年は118か国から約7,900社の出展企業と200か国から約140,000人もの来場者が集まり、国際的な食品ビジネスにおけるトレンドとイノベーションについて議論する場としても盛り上がりました。
日本の食を世界へ!
ANUGAの会場には、日本ブースも設けられ、約100の日本の食品および飲料企業が出展。アワベスコミュニティからは3社が出展し、国際市場で積極的に挑戦しました。
展示会初日には、農林水産省がJETROと共催し、日本産食品のプロモーションイベント「Japan Night」を開催。水産物などの日本産食品をアピールするためのイベントとして行われました。
注目の「7つのトレンド」
まずは今年のANUGAの展示会の中心となった、食品および飲料業界で今注目されている「7つのトレンド」をANUGA公式サイトより抜粋してご紹介します。このトレンドに焦点を当て、世界の消費者傾向を知ることが、今後のビジネス展開においてのキーポイントとなります。
Discover the Anuga Food Trends
①:Alternative Meat Proteins/肉のたんぱく質の代替
たんぱく質は人間の栄養において重要な役割を果たしていますが、私たちが摂取するたんぱく質は、動物由来が大部分を占めています。肉の代替製品は近年の食品トレンドであり、ベジバーガーやベジタリアンの肉の代替製品などに限らず、培養肉や昆虫など多彩な選択肢が登場しています。環境への影響が少ないと言える植物由来のたんぱく質に向けて業界内で強力な動きがあります。
②:Clean Label/クリーンラベル
食品には何が含まれているのか?この食品はどこから来ているのか?消費者はますますこれらに興味を示しています。「添加物/保存料なし」など透明性を求めるに加えて、サスティナブルに対する関心も増加しています。
③:Convenience & Snacking/利便性&スナック
現代では食事に費やす時間が少なくなっています。この傾向に合わせて、スナックが現在の食品トレンドの1つとなりました。インスタント食品、テイクアウト製品、冷蔵食品など、いかに調理や食事自体に時間を短縮できるかが重要な要素になっています。消費者はかつてないほど時間に迫られ、便益を求める一方で、健康に気を使うことも忘れてはいません。
④:Free From & Health foods/フリーフロム&健康食品
古くから「健康」が業界の主要な食品トレンドの一つであることは変わりません。しかし、ライフスタイルの変化から、現在では健康的な食事への意識がさらに急激に高まりました。このため、小麦、グルテン、ラクトース、砂糖などを控える選択肢が市場に増えており、「無添加」のトレンドは引き続き発展しています。
⑤:Plant-based Proteins/プラントベースのタンパク質
植物性の製品は健康的で地球にやさしいと認識され、特に若い消費者から特別な注目を集めています。今回の食品トレンドでは、フレキシタリアン向けの製品やベジタリアン、ヴィーガン向けの食品が多く見られますが、それに加えて、環境への配慮から肉の消費を減らそうとする人々をサポートするプラントベースの商品も増えています。
⑥:Superfoods and ancient grains/スーパーフードと古代穀物
スーパーフードは、栄養価に優れた食品の一種で、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質、タンパク質、繊維などの栄養素を豊富に含んでいます。ここ数年で、スーパーフードと古代の穀物が大流行しました。消費者がよりバランスの取れた、健康的で活発な生活を追求しようとする中、スーパーフードは求められているライフスタイルをサポートするための、主要な要素の一つです。
⑦:Sustainably Produced or Packaged/サスティナブルな製品または梱包
サスティナブルに対する消費者の期待はかつてないほど高まっています。食品はもちろん、その生産プロセスや梱包においても消費者が買い物をする際に意識する重要なポイントです。これにより、企業は特に食品廃棄物とプラスチック廃棄物の削減を優先するようになっています。
食の最先端!話題の製品紹介
新型コロナウイルスの収束後初めてとなる今年のANUGAは、活気に包まれた5日間の開催となりました。各ホールには様々なカテゴリが展示され、上記でご紹介した食品トレンドが随所に見られます。どれもが興味深い展示でしたが、実際に私たちが試食し手に取った中でも、特に印象的であった食品を紹介いたします。
プラントベースの水産物製品
・革新的なプラントベースのイクラ
最初に私たちの驚きを引き起こしたのは、水産物ブースで出会った「プラントベースのイクラ」。その見た目も香りも、まるで本物のイクラのようですが、実際には海藻成分とパプリカの着色剤が使用され、当然ながら魚の卵は一切含まれていません。
ツアー参加者で試食してみると、北海道のイクラに慣れ親しんだ皆さんでさえ、驚くほど本物のイクラにそっくりな味わいに驚かされました。北海道の誇るイクラは、海外からの観光客にも愛されていますが、魚介類が苦手な方や、ベジタリアンやヴィーガンの方々も一緒に北海道の寿司を楽しめるプラントベースの魚介類があれば、新しい未来の寿司屋が誕生するかもしれません。
他にもプラントベースのマグロ、サーモン、エビ、ブラックキャビアなどが紹介されていました。
・サスティナブルなツナ缶
続いて目に留まったのは、インパクトあるパッケージのツナ缶。ヨーロッパでもサンドイッチやピザ、サラダなどでもツナは欠かせない存在ですが、こちらは100%植物由来でたんぱく質が豊富な海藻とそら豆から作られていて、ツナを使用するレシピをヴィーガン料理に変えることが可能です。海を第一に考え、その美味しさを大切にすることをコンセプトとした、このプラントベースのツナは、高い栄養価やマグロの保護を提供すると共に、漁業コミュニティに新たなビジネスモデルを提供し、サスティナブルな食料生産を高めています。
また、落ち着いたカラーのイメージが強いプラントベース製品ですが、今回の展示会ではポップなカラーで活気ある雰囲気のスタートアップ企業が多くみられました。
トレンドを網羅!多彩な肉製品
ANUGAの会場で最も大きな規模を占めているのが肉製品。世界中の食品業者が新しい革新的な肉製品を探して賑わっています。消費者の健康的な食事、地産地消、サスティナブルなどに対する要望に応えるため、今年のANUGAでは、肉、ソーセージなどに加えて、ヴィーガンやベジタリアンの肉の代替製品、およびタンパク質を含むプラントベース製品なども再び焦点となりました。
驚くべきことは、これらの肉の代替製品が、動物性の肉製品と同じホールにブースを並べていることです。動物性と植物性の製品を分け隔てなく展示することで、どちらを選ぶかにかかわらず、共存する環境を作り出す現代の傾向を実感できます。
いくつかのブースで私たちが実際に試食し、その完成度の高さに絶賛したプラントベースの肉の代替製品をご紹介します。
・本物の肉を超える味!バーガー
出展企業:BEYOND MEATが開発するプラントベースの肉は、5つの基本原料から作られています。
①たんぱく質:
エンドウ豆と玄米が連携された植物性プロテイン
②脂肪:
菜種油、ココナッツオイル、抽出圧搾キャノーラ油
③炭水化物:
ジャガイモのでんぷん、メチルセルロース(植物繊維誘導体)
④ミネラル:
カルシウム、鉄、塩、および適量の塩化カリウム
⑤フレーバー&着色:
ビーツやリンゴなどの果汁
これらの原料を使用し、肉に限りなく近い香り、食感、そして味が表現され、実際に試食してみてもプラントベースだとは気が付かないほど。そしてこちらの展示の様に、原材料を明確にアピールすることが消費者の購買意欲に繋がるポイントです。
・Free From 添加物&クリーンラベルのフィレ!
続いて、自然由来の成分だけで製造され、添加物は一切含まれず、動物の命を救うコンセプトを持つ、出展企業:Planted Foods GmbH。厳格な認証プロセスの一環ともされるB Corpの認証を受けています。
「人工的な色素やフレーバー、食品添加物、うま味調味料そして有害な成分は一切使いません!」と約束されたプラントベースの肉製品は味も肉そのもの!チキンやケバブなどラインナップも豊富です。
・肉愛好家が立ち上げたベジタリアン・ブッチャー
「豚肉よりも柔らかく、鶏肉よりもジューシーです!」と称賛される出展企業:The Vegetarian Butcherは環境と動物にとってより良いものでありながら、肉の味と楽しみを再現することを目指しています。彼らは自社製品を肉の代替製品としてではなく、肉の後継者、つまり新しい肉として捉え、味のクオリティを追求しています。
・温めるだけ!プラントベースのプルコギ
韓国の定番グルメもプラントベースで登場!しかも電子レンジで温めるだけのインスタント食品として、プルコギやキンパ、餃子など韓国料理の豊かな風味をプラントベースの料理に融合しています。ヨーロッパの人々にとって韓国料理を家庭で調理することは簡単ではありませんが、こういったインスタント製品で簡単に美味しく、かつ健康的に食べられることが、ヨーロッパでも人気の理由です。
【トレーサビリティを追跡できるトラッキングコード】
海を救うことをビジョンに、90品を超えるサスティナブルな冷凍魚、缶詰、生鮮食品を販売している出展企業:Followfood。「原点まで完全透明」を指針の1つとしており、トラッキングコードを発明し、フォローフードの社名のとおり、すべての製品において、消費者がトレーサビリティを追跡できるようになっています。このパッケージに印字されたトラッキングコードをオンラインで入力することで、この魚がどこから来たのか、どのように育てられ運送されているのか、また野菜の場合はどの農場で生産されたものかを正確に確認することが可能になりました。
こちらでご紹介した以外にも展示会ANUGAでは、ユニークで魅力的な数々の製品が紹介され、新しいテクノロジーや革新的なアイディアによって、次世代の食のアプローチが築かれました。
一方で、伝統的な食品(イベリコ豚や和牛、各国の伝統料理など)の人気も絶えずブースは賑わい、伝統と革新が共存する食品業界の多様性を感じることができ、とても刺激ある視察となりました。
ドイツでのアワベスの活動
今回アワベスではANUGAの出展および視察を通して、コミュニティメンバーである事業者の方々と以下の様な活動を行いました。
・アワベス運営事務局による見どころツアー
出展された事業者の方を対象に、アワベス運営事務局より今回のANUGAについてのブリーフィングと約2時間による展示会見どころツアーを開催いたしました。
・LINEミニ配信
ANUGA及びドイツ市場調査の様子をミニレポートとしてコミュニティメンバー限定の公式LINEにて配信いたしました。
・INNOVA MARKET INSIGHTS田中さんによる、リアルタイム現地リポート
今回ANUGA訪問および出展が叶わなかったコミュニティメンバー向けに、2日間(各約30分)にわたって田中さんの解説付きで注目すべきブースをLIVE配信しながら回っていただきました。特にサスティナブルな食品に関する情報の幅広いトレンドを紹介する「ANUGA トレンドゾーン」は、食品および飲料業界の最新動向を一挙に知ることが可能です。最後には質問タイムも設けられ、参加者の皆さんにも展示会場の雰囲気を感じていただきました。
・ドイツ市場調査
アワベス運営メンバーにてドイツ最大の日本人コミュニティのある街、デュッセルドルフを視察。実際にどのような製品が市場に並んでいるのか、そしてヨーロッパでの日本食への反応など、日本食に携わる関係者の方々にもインタビューにご協力いただき調査しました。こちらの内容は第3回勉強会にてご紹介させていただきます。
ANUGAを終えて、私たちができること
ANUGAは、約300,000平方メートルの総展示面積にわたる壮大な展示エリアが、満員になるほどの訪問客で賑わいました。出展されたコミュニティメンバーも、5日間を通じ、会場の雰囲気に合わせてブースの展示スタイルを変えたり、自社製品をアピールする手段を独自に構築するなど、来場者に印象を残す努力をされていました。展示会ではそれぞれのブースは国や製品によって特徴がありますが、いかにストレートに分かりやすくアピールするかなどの「魅せ方」も重要なポイントです。
さらに今後の商品開発においても、食材の宝庫である北海道の魅力をふんだんに使用し、かつ世界のトレンドや傾向を取り入れていくことが、世界で通用する食品を生み出す手助けになることを感じます。
アワベスおよびさっぽろ産業振興財団では、「さっぽろの食文化」を世界で高く評価されるものにし、EU市場進出に関する情報提供や勉強会を通じて、参加者がEU市場に対する理解を深め、国際展開の戦略を立てるのをサポートします。北海道の豊かな食の魅力を世界に発信し、国際市場での成功に向けて共に学びましょう!