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伝統の「杵つき」を、一瞬の冷凍で世界へ。

80年の歴史を紡ぐ「イナホ製菓」が挑む、和菓子の新たなグローバル・スタンダード

北海道・小樽。かつて北のウォール街と呼ばれ、港を通じて人と文化が激しく往来したこの街には、小豆を全国へ送り出す拠点としての歴史から、豊かな和菓子文化が根付いています。この地で1946年(昭和21年)に創業し、今年80周年を迎えた「イナホ製菓」は、伝統的な職人技と革新的な冷凍技術を融合させ、日本の伝統美を世界へ発信し続けています。

会社名:株式会社日本食品安全研究所
設立年:1946
WEBサイト:https://www.jfsl.jp

団子の売り歩きから始まった、冷凍和菓子の先駆け

イナホ製菓の物語は、戦後の混乱期に団子を売り歩く商売から始まりました。最大の転換点は1976年(昭和51年)、品質劣化が早く販路拡大が難しかった和菓子に、いち早く「冷凍」という概念を持ち込んだことです。
「冷凍してしまえば、全国に、そして世界に届けられる」。この先見の明こそが、現在の同社を支える基盤となりました。現在では日産10万個以上の製造能力を誇り、北海道内のスーパーから全国の大手チェーン、ホテルのビュッフェまで、幅広くプロダクトを提供しています。

効率を追求しながらも譲らない「杵つき」の食感

大量生産を可能にしながらも、イナホ製菓が頑なに守り続けているこだわりがあります。それは、餅を「杵」でつくという伝統的な製法です。
現代の製造現場ではもち米の粉(粉末)から餅を作るのが一般的ですが、同社では一晩浸水させた「もち米」そのものから、木の杵を用いて餅をつき上げます。この工程を機械化しながらも再現することで、粉からでは決して出せない、もっちりとした力強い食感と米本来の甘みを生み出しています。また、粒あんの製造においても、豆の粒感を残しながら旨味を閉じ込める独自の炊き方を追求し、看板商品である「おはぎ」の圧倒的な満足感を支えています。

「水」をコントロールし、時間を止める

冷凍和菓子の最大の課題は、解凍後の食感の再現性にあります。餅は一度冷えると固くなる性質がありますが、イナホ製菓は長年の研究により、その物理的な変化を克服しました。
「鍵となるのは『水』のコントロールです」。原料である北海道産のもち米や小豆、砂糖の性質を熟知し、水質の特性を活かしながら水分バランスを緻密に調整する。この目に見えない水分管理のノウハウこそが、解凍した瞬間に「いま作りたて」のような瑞々しさを取り戻す魔法の正体です。

伝統の再発明と、世界への招待状

和菓子離れが進む若年層や、健康意識の高まる海外市場に向けて、イナホ製菓は「日本食品安全研究所」という新会社を通じて新たな挑戦を始めています。地元の高校生との共同開発や、北海道産イチゴの餡を用いた色鮮やかな「タピオカ餅」など、伝統の枠に捉われない自由な発想でプロダクトの幅を広げています。
特に海外市場では、食物繊維が豊富で脂質の少ない「ヘルシーフード」としての和菓子のポテンシャルが注目されています。伝統的なおはぎや大福から、最新のフルーツ大福まで。小樽の地で培われた「杵つき」の魂を、マイナス20度の世界に閉じ込めて国境を越える。
80年前、団子を売り歩いた創業者の情熱は今、北海道産の厳選された素材と共に、世界中の人々の心を癒やす「甘いひととき」へと形を変えています。自然の恵み(Nature)を科学の視点で見つめ直し、真心を持って届ける。イナホ製菓の歩みは、そのまま和菓子の未来へと続いています。