OUR BEST FOODS from Sapporo

自然の恵みを、世界が求める「喜び」へ。

北海道スイーツの進化と、東アジアから広がる新たなビジョン

北海道の大地が育む豊かな農産物や乳産品。そのポテンシャルを最大限に引き出し、世界中へと届ける。創業30年を迎えた「ベイクド・アルル」の歩みは、常に「北海道ブランド」の価値をどう高め、次世代へと繋いでいくかという問いと共にありました。

会社名:株式会社ベイクド・アルル
設立年:1994
WEBサイト:https://www.bake-de-arles.com/

冷凍という「時間」を止める魔法

ベイクド・アルルのプロダクトの真髄は、実は「店舗」ではなく「工場」の中にあります。多くのスイーツメーカーが実店舗の成功を背景に外販へ乗り出すのに対し、最初から、広域流通を見据えたBtoBの工場運営からスタートしました。そこで30年間磨き続けてきたのが、冷凍しても損なわれない、むしろ冷凍することで最高の状態を維持できる独自のレシピです。
かつて、冷凍スイーツは「フレッシュな生菓子に劣るもの」という偏見がありました。しかし、その固定観念を科学と情熱で覆してきました。特に心血を注いだのが「生クリーム」の挙動です。生クリームは繊細で、単純に凍らせると解凍時にパサつき、滑らかさが失われます。スポンジの気泡の大きさ、皮の焼き加減、そしてクリームの油脂分を緻密に計算し、解凍した瞬間に「いま作りたて」であるかのような、しっとりとした質感を実現しました。急速冷凍技術が未発達だった時代から積み上げてきたこの「冷凍に耐えうるレシピ」こそが、アイデンティティなのです。

コンビニエンスの先にある「エッセンス」

2000年代以降、コンビニスイーツの劇的な進化により、市場の風景は一変しました。大手各社が北海道産原料を大々的に使い始め、高品質なスイーツがどこでも手に入るようになったのです。しかし、これを脅威ではなく、さらなる進化へのチャンスと捉えました。
北海道産原料といっても、そこには厳然たる「ランク」が存在します。例えば、主役として扱う生クリーム。一般的に広く使われる乳脂肪分30%前後のものと、トップランクの47%のものでは、口に含んだ瞬間の香りとコク、後味の余韻が全く異なります。こうした最高品質の素材をベースに、単なる「北海道産」という言葉に甘んじることなく、独自の「エッセンス」を加えることで、付加価値の高いプロダクトを追求しています。ただ甘いだけでなく、素材の重厚感と繊細な香りが共存する。それがベイクド・アルルの目指す「現代の北海道スイーツ」の姿です。

五感を刺激する「実演」の戦略

経営の舵取りの中で、大きな選択をしました。かつて展開していたレストランや店舗を整理し、自分たちの強みがどこにあるのかを再定義したのです。その答えの一つが、現在百貨店などで展開している「パンの実演販売」です。
なぜ、スイーツメーカーがパンなのか。それは「香り」という強力な武器をプロダクトに持たせるためです。冷凍の状態では、香りは眠ったままです。しかし、現地で7割まで焼き上げたパンをその場でリベイク(再焼成)すれば、バターやチーズの芳醇な香りが空間全体に広がり、人々の本能的な食欲を呼び起こします。インターネットで何でも買える時代だからこそ、その場でしか味わえない「体験」をプロダクトに付与する。冷たいスイーツと、温かいパン。この対極にある二つの柱が、唯一無二の存在にしています。

酪農家への敬意、そしてハラルへの挑戦

プロダクトを形作るのは、北海道の厳しい自然と向き合う農家の方々です。小麦、乳製品、砂糖。これらすべての源泉である一次産業に対し、ベイクド・アルルは深い敬意を抱いています。かつて江別の小麦農家の方々と座談会を行った際、「自分たちが丹精込めて作った作物が、これほどまでに喜ばれる商品に生まれ変わるのか」と驚きの声をいただきました。その喜びの循環こそが、ものづくりを続ける原動力です。

心を動かす「代名詞」としてのシュークリーム

提供する多くのラインナップの中でも、不動の象徴といえるのが「シュークリーム」です。創業間もない頃から愛され続けてきたこの一品には、哲学が凝縮されています。
ターゲットである本州や海外の消費者が、北海道に何を求めているのか。それは、都会的な洗練さ以上に、素材が持つ圧倒的な「味の濃さ」と「ボリューム感」だと分析しています。だからこそ、シュークリームは、一口食べた瞬間にクリームが溢れ出すほどの満足感を追求します。皮はしっかりと焼き込み、香ばしさを際立たせる。そこに、北海道産の最高ランクの生クリームを惜しみなく詰め込む。
スイーツは、生きていくために不可欠な栄養素ではありません。しかし、誕生日のお祝いや、何かに失敗して落ち込んだ夜、あるいは一週間頑張った自分へのご褒美として、人々の心の「余白」を埋める大切な役割を持っています。
「こんなにクリームが入っているなんて」という驚きや、「やっぱり北海道のものは違うね」という納得感。届けたいのは、単なるお菓子ではなく、その瞬間、その場所で生まれる小さな幸福の記憶です。固定観念を捨て、常に新しさを取り入れながらも、根底にある「素材への誠実さ」は決して揺るがない。北海道の豊かな自然が育んだ最高の素材を、これからも世界中へと繋ぎ、人々の日常に「幸せ」を届け続けていきます。