OUR BEST FOODS from Sapporo

食品関連事業者向け EU圏進出勉強会②&交流会を開催しました

こんにちは、さっぽろ産業振興財団です。
 
「OUR BEST FOODS! FROM SAPPORO」の勉強会の第二回目がミートアップイベントとして9月20日、札幌市産業振興センター内 “Sapporo Business HUB”にて開催されました!
 
このコミュニティ「OUR BEST FOODS! FROM SAPPORO」、通称「アワベス」ではEU圏進出をこれから初めて取り組む事業者から、EU圏へすでに多くの輸出を行っている事業者まで、道内食品関連企業10社が参加しています。活動の中心は、専門家を招き勉強会を実施することで、知識の共有とスキルアップを図っています。
食のEU圏進出コミュニティ「OUR BEST FOODS! FROM SAPPORO」を発足しました

第一回目の勉強会では、EU市場への洞察を深め、貿易規制などについて学ぶために、現地フランスからの2名の専門家をオンラインでお招きした講演を開催。EU進出への最初の一歩となりました。
食品関連事業者向け EU圏進出勉強会①を開催しました

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そして第二回目となる今回は、オランダのグローバルマーケティング企業INNOVA MARKET INSIGHTS 日本カントリーマネージャーの田中良介(たなか りょうすけ)さんにご登壇いただき、「世界の食品トレンドを学び、ビジネスに生かす方法」についてレクチャーしていただきました。
 
コミュニティから出席していただいた3社の他に、今回はコミュニティ以外の北海道内の食品関連事業者も参加できるオープンセミナーとしてお集まり頂いたのは、約20社!新たな出会いや、意見交換の場ともなり幅広い交流会になりました。
そんな「アワベス」第二回勉強会の様子と講演内容の一部をご紹介いたします!

第一部:「世界の食品トレンド」製品開発のヒント

今回ご講演いただいた、INNOVA MARKET INSIGHTS の日本カントリーマネージャー、田中良介さんは、オランダのフードバレーを拠点に、世界の食品トレンドを日本へ、そして日本のトレンドを世界に広め、海外展開をサポートされています。

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INNOVA MARKET INSIGHTS 日本カントリーマネージャーの田中良介さん

今までの常識が通用しない新時代。新たな価値観が求められるようになっています。田中さんは、『世界に売り込むためには、世界を知ること』が重要であると伝え、大きな4つのトレンドポイントをご紹介いただくと共に、それに基づく情報共有を行ってくださいました。

①食と健康

健康が大事なのは当然、日本でも同じです。現在、健康は世界的に最も重要視されています。EUでは「オーガニック」「グルテンフリー」「無添加」などが特に健康訴求の一部としてあげられ、「砂糖不使用」や「ラクトースフリー」に対してもEUの人たちの意識は高いようです。
EUのスーパーマーケットにはグルテンフリーやラクトースフリーの製品が当たり前にずらりと並んでいて、これらの食品は現地の人々にとって身近な存在になっています。
 
そこで問題になってきているのが、健康な食品であることをアピールしたパッケージ表記。「〇〇は使っていない」「身体に良い〇〇を使っている」という情報が増え、消費者はその信ぴょう性に疑いの目を向けるようになっているのが現状です。
 
では、健康意識の高いEU消費者はどのように「身体に良い食品」を見分けているのでしょうか。
ここでご紹介したいのが、客観的に栄養スコアを提示する、EUの「ニュートリスコア制度」。これは食品の栄養成分情報を一目で理解しやすくするためのフロントパッケージに表示されるシステムです。この制度では、食品のパッケージにAからEのスコアを使用して、消費者がその食品の栄養価を簡単に比較できるようになっていて、消費者のための健康的な食事の選択をサポートする、重要なツールとなっています。

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ドイツのニュートリスコアが表示されている製品一例

そして健康というのは身体に良いモノを意識するだけでなく、サステナブルの観点で地球環境や社会貢献などの「心の健康」も重要であることを忘れないようにしましょう。

②クリーンラベル

海外進出する上で、非常に重要なのは「クリーンラベル」です。
 
---ポイント-------
日本では「クリーンラベル」という言葉がよく使われますが、海外では「クリーンレーベル」と表現しますので、外国のバイヤーと話す際は注意して発音しましょう。
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「クリーンラベル」には明確な定義は存在しませんが、一般的な考え方としては、無添加、ナチュラル、オーガニック、または遺伝子組み換えを使用しない製品のことを指します。定義が明確でないため、少し難しい側面もありますが、別の表現として「フリーフロム(Free From)」という言葉が使われます。これは例えば「グルテンフリー」や「シュガーフリー」など、健康に良くないとされる成分を含まないこと。
そしてもう一つ同時に世界に広がるキャッチフレーズ「レス イズ モア(Less is More)」。不必要な添加物などは使わず、シンプルに作ることで、健康が得られる「少ないことは、より豊かなこと」を意味し、EUで関心を集めています。

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「罪悪感のないパスタ革命」のキャッチコピー広告(ドイツのスーパー)

しかし、製品に完璧なクリーンラベルを持たせるのは、時に難しい場合もあります。そこで最近では添加物を最小限にし、オーガニックな原材料を使用したり、遺伝子組み換えを行わないような製品が増えていて、重要なことは、これらの製品が完璧である必要はないということ。企業として、体に悪いものであるか、または企業のコンセプトに合わない場合、それを「Free From(取り除きましょう)」と考えることが大切です。
 
近年、クリーンラベルは世界的に注目されており、ヨーロッパでは特に主流となっているため、このキーワードなしに、EU進出することは容易ではありません。クリーンラベルの製品は、世界で発売されている製品の約3分の1に存在し、ヨーロッパと北米で割合が高い傾向にあります。
割合としては低い日本ですが、最近は「無添加」や「〇〇不使用」をPRする製品が増えています。これはクリーンラベルとして訴求する際のポイントとなりますので、製品にクリーンラベルの価値を落とし込む方法を検討し、消費者にアピールしましょう。

また、原材料をできるだけシンプルにすることもクリーンラベルの一環です。原材料が少ないと、製品に対する信頼性が高まり、消費者に対して正直な製品であることを示すことができるからです。


そしてもうひとつ、EU進出において大切なことは、オーガニック要素を意識すること。クリーンラベルを持つ製品は、できる限り体に良い原材料を使用し「Free From」を強調しています。ただし、最近の傾向では、悪いモノをマイナスするだけでなく、商品を作る背後にある「思い」や「ストーリー」をプラスして伝えることも重要視されています。
 
例えば、「〇〇産地の企画外のフルーツを使っています」と具体的なストーリーや、「地域の農家をサポートしています」というような思いが、商品に付加価値をもたらします。単に何かを使わないことだけでなく、どのような価値観やコンセプトで商品を生み出しているのかを伝えることが、セールストークの重要なポイントです。
クリーンラベルは消費者にとって信頼性のある、健康的でシンプルな製品を示す重要な要素となっており、海外進出を考える企業にとって注目すべきトレンドになっています。

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実際の勉強会の様子

③サステナビリティ

世界的にはクリーンラベルが消費者に意識されるようになっていますが、最近の変化として消費者の具体的なクリーンラベルに対するイメージは、「サステナブルな原材料を使用している」や「地域社会に貢献している」さらには「地球環境に配慮している産地が明示されている」などが挙げられます。この事から分かるのは、クリーンラベルとサステナビリティのイメージが交差し始めているという事です。
 
この変化は、消費者やバイヤーが製品について詳細な情報を求める傾向に関連しています。彼らが知りたいことは、製品の特徴だけでなく、具体的な成分、使用されている原材料、栄養成分、製品の起源や原産地についても含まれ、このような情報の透明性や「トレーサビリティ」がますます求められています。
サステナビリティの分野において、世界的に見て、消費者が特に関心を持っているのは、動物福祉、食品製造、プラスチック廃棄物、海洋汚染など。これらの問題に意識が高い消費者が増えている一方で、サステナビリティな製品は、価格が高くなる傾向があることから、「あなたはどんな社会問題に貢献する製品にお金を支払うことができますか?」という質問が生じます。
 
興味深い結果として、「何に関心があるのか」と「どんな問題に対してお金を支払えるか」では、人によって異なる回答が得られることです。

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INNOVA MARKET INSIGHTS 提供資料

そして、サステナビリティの新たなキーワードとして「アップサイクル」が注目されています。これは、これまで規格外とされていた原材料、野菜、果物などに新たな価値を見出し、それらを新しい製品として再利用するプロセスを指します。
 
具体的な一例として「おからチョコレートチップ」。おからは日本固有の食材であり、日本人はこれを無意識に健康的で美味しいとし、昔から積極的に利用していますが、このような食品の副産物を活用することで、高栄養価でおいしい製品が生まれ、これがアップサイクルの一環とされるようになりました。ヨーロッパやアメリカでも、このようなアプローチが注目され、「OKARA」も英語圏で広まりつつあります。
 
ここで重要なのは、一般的に日本はサステナビリティに対する意識が低いとよく言われますが、それは一面的な見方であり、実際には日本人が無意識に再利用や持続可能な実践を古くから行っている事例が多いことです。しかし、日本人は言語化したアピールが苦手なため、これまで自然におこなっていた「アップサイクル」のようなサステナビリティは表面化されにくい側面が存在します。結果としてサステナビリティに繋がっている製品や企業コンセプトを、どう上手く言語化しアプローチしていくかも、日本の今後の大きな課題です。

④プラントベース

世界の食品トレンドとして重要なポイントの4つ目は、「プラントベース」。 プラントベースの食品は非常に重要な分野となっています。日本は伝統的な植物性食品が豊富である一方、新しいプラントベース概念については、他国に比べて遅れている状況です。

プラントベースとは、植物由来の食品で、数年前にヨーロッパで試食したときは、正直に言って美味しくありませんでした。しかし、近年の製品は品質が向上し、味のレベルも上がりました。

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プラントベース食品が並ぶドイツのスーパー

今では数多くの製品がある中で、ユニークだったプラントベースの商品が「ゆで卵」。 アーモンド、カシュー、ココナッツミルクなどが原料として使用され、黄身部分はターメリックで作られています。そのまま食べると卵の味はしませんが、付属された燻製されたヒマラヤの塩をつけると、硫黄の香りでなんと突然ゆで卵の味に変わります。このように、調味料を工夫して美味しさを引き出す方法があります。
 
ではどんな人たちがプラントベース食品を食べているのでしょう。大きく分けて「フレキシタリアン」、「ベジタリアン」、「ヴィーガン」という3つのカテゴリーが存在します。ベジタリアンとヴィーガンという言葉は、最近では日本でもよく知られていますが、世界中でプラントベース食品を摂っている人々のうち、最も多いのは「フレキシタリアン」と呼ばれるグループです。彼らがもっとも多い割合を占め、フレキシタリアンは別名「セミベジタリアン」とも呼ばれ、「健康のために肉の摂取を極力減らすが、完全に肉を断つわけではない」人々です。彼らは健康を意識しており、肉の摂取を減らすことを目指しています。
 
日本人は伝統的に和食を中心に摂ることが多く、菜食主義的な傾向があるため、実質的にはフレキシタリアンと見なすことができるでしょう。そして、世界的に見てもフレキシタリアンの割合が高いため、このカテゴリーの人々をターゲットにしたビジネスが成功する可能性があるという専門家の意見もあります。

「ポジティブに不完全たれ!」

田中さんの講演は、参加者にとって非常に興味深いものでした。参加者の皆さんが熱心に耳を傾け、情報を吸収するためにメモを取る人々や、うなずきながら同意する方も多く、この勉強会が参加者の皆さんにとって活気あふれる学びの場となりました。

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実際の勉強会の様子

世界の食品トレンドにおける今後の方向性について、田中さんより、最後にこんなお話もありました。
 
今回お話した内容を完璧に実行するのは簡単ではありません。そこで、現在、世界中で注目されているのは、「ポジティブに不完全たれ」というキーワードです。具体例を挙げると、実際にフランスで販売されている、ある飲料の裏ラベルには「この製品は完璧ではありませんが、より環境に優しい地球に向けて努力しています。植物性の原材料を使用し、パッケージに工夫を凝らしています。」と表示されています。
 
サステナビリティやSDGsなど、素晴らしい目標があるにも関わらず、それらを完璧に達成するのは難しいこと。そこで、自分たちが何を実現し、何をまだ実現できていないのかを正直に共有するアプローチが世界では広まっています。
 
実際の消費者アンケートでも、「完璧な製品」と宣伝されているよりも、企業が直面している課題を誠実に伝える方が信頼性が高まることが示されています。つまり、未完成な部分があることを認めつつ、目指している方向性をしっかり伝えることが、現在〜将来の世界的なトレンド「ポジティブに不完全たれ」なのです。

第二部:実食と交流会 ~深まった参加者の絆~

第二部では交流会としてアワベスのコミュニティメンバーが提供する商品を、カテゴリー別でマーケット情報を田中さんから詳しく学びました。さらに、参加事業者各社がEU進出に向けた取り組みや成功体験について積極的に情報共有が行われ、和気あいあいとした会場の雰囲気の中、事業者同士の交流を深め、お互いに学び合う場になりました。

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実際の交流会の様子

そして今回は、実際の食品パッケージを手に取り実食いただく場も開催。田中さんに持参いただいたトウモロコシ100%のパスタや他のプラントベースの製品パッケージを手に取っていただき、さらにアワベス運営事務局からデンマークで販売されているお菓子を提供し、EUで実際に販売されている食品を楽しみながら試食し、皆さんに思い思いに評価していただきました。

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これにより、異なる文化や市場の理解を深め、そして国際的な展望を持つ参加者同士の絆が深まったことでしょう。 会場は和やかな雰囲気に包まれ、熱い議論や意見交換と共に、一体感が高まりました。

勉強会第2回目を終えて

今回はオープンセミナーとして、EU進出を目指すアワベス コミュニティ参加者と、さらにコミュニティ以外の事業者にも多く参加いただき、計30社が集結!新たな出会いの場ともなりました。
会場の盛り上がりと情熱が、参加者のみなさんたちの共通の目標に向けて新たな活力をもたらし、そしてこの交流が、北海道の食品を世界に広めるための貴重な機会となることを願います。

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アワベス第2回勉強会に参加された事業者の皆さん

「OUR BEST FOODS! FROM SAPPORO」は、「さっぽろの食文化」を世界で愛される存在にし、EU市場進出に取り組む事業者の自信を高めるためのコミュニティです。EU進出に関する情報の提供と勉強会を通じて、EU市場に対する理解を深め、国際展開の戦略を築くお手伝いをします。同じ目標を持つ食品関連事業者同士が集まり、海外展開における課題やアイデアを共有することで、道内の食の魅力を世界に広めましょう!

食産業振興課では、このようなEU圏進出を目指す道内事業者の支援だけでなく、『海外市場オリジナルレポートの提供』『貿易情報の提供』『海外バイヤーとの商談会』などの海外展開支援も実施しています。
どうぞお気軽にご相談ください。
一般財団法人さっぽろ産業振興財団 食・ものづくり産業振興部