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【後半】 食品関連事業者向け EU圏進出勉強会③を開催しました

記事の前半では今後のフードトレンド予想や、見本市の使い方、輸出規制などについての講演をご紹介いたしました。
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【前半】食品関連事業者向け EU圏進出勉強会③を開催しました

第二部: ANUGA出展事業者との対談~海外展開経験者

西尾さんとの対談形式で、海外展開経験者のコミュニティメンバーよりこれまでの体験談やANUGAで感じたことをお話しいただき、今回の勉強会にご参加の皆様にとって貴重な情報を共有してくださいました。

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コミュニティメンバーと西尾さんの対談の様子

EU進出を目指すことになったきっかけは?
FSSC22000の国際認証を取得したことで、特に大手メーカーに対する信頼度が向上し、様々なオファーをいただけるようになったことです。EUの混合食品規制の改正に伴い、適合商品の依頼を受け、試行錯誤の末にそれぞれの課題をクリアし、製品開発を成功させたことが、私たちの自信を高めました。

ANUGAで感じた、良かった点、反省点はありますか?
特に欧州諸国のブースは、デザインが非常に素晴らしく、プレゼンテーションや業界の新たな特徴、魅力的なカラーなど、全てがプロフェッショナリズムを感じさせ、各国のブースが世界観を表現していることに感心しました。私たちが出品した食品の試食は好評でしたが、デザインが追いついておらず、プレゼンテーションやデザイン性についてはまだまだ改善が必要だと気づきました。

実際に訪問していた各国のバイヤーへの印象は?
経験者に聞いて抱いていた「固い」イメージと異なり、実際にはカジュアルで優しい雰囲気のバイヤーが多く、特に若い女性の方が多かったです。試食に対しても好意的で、プラントベースの製品が非常に好評でした。欧州の方々は、食品の歴史的な背景や原料の背後にある物語を重要視しており、日本の文化や食文化を理解し、尊重しているため、日本らしいプレゼンテーションが重要だと感じています。また、サステナビリティに対する認識も高く、ヴィーガンの人口が多いことには倫理性や哲学的な要素が影響していることが分かりました。この点において、ヨーロッパは日本よりも一歩先に進んでおり、サステナビリティに関する意識が高まっていることを学びました。

EU市場への挑戦に向けて、経験者としてのアドバイスはありますか?
日本では特に大手メーカーの商品の場合、消費者は製品表示をあまり確認することなく、購入することが多いですが、EUの消費者は口に入るものに対して自己認識と責任を持ち、製品の安全性などに対して疑念を抱きがちです。EUの市場では、適合性のエビデンスや客観的な事実に基づく表示が求められているようで、これは日本市場とは異なるアプローチだと感じました。
私たちが注視しているのは、容器包材の安全性に関する要件です。EUにおける食品接触材規制に基づいた素材を使用していますが、素材メーカーから得られる証明書は専門的な詳細が求められ、時にはエビデンスを取得までには時間も費用もかかります。中小企業にとっては大きな負担です。これらのことを行政と協力し合い、輸出に伴う実務の助成金や支援金などに関する情報を集めることで、輸出拡大に対する課題が軽減されるかもしれません。

第三部:ドイツ市場調査~現場から見る北海道の食品の可能性~

アワベス運営委員ではANUGA訪問の際に、現地の食についての現状や理解を深めるため、街の食品店の様子や、日本食品の普及などの市場調査を行いました。また日本食に携わる方々との意見交換の場を設けて市場調査を行いましたので一部をご紹介いたします。

ドイツ場査の地、デュッセルドルフについて

今回の視察を行った都市は、ドイツの商業都市デュッセルドルフです。デュッセルドルフは多くの産業と分野で活気あふれ、さらにはヨーロッパ最大級の「リトル東京」と称されるエリアも有しています。日本人コミュニティにとっても馴染み深く、デュッセルドルフ在住邦人は7000名以上に上り、市内とその周辺地域には600社を超える日本企業が進出。欧州における日本経済の要所としての役割を果たしています。

現地の視察レポート

現地の実態や日本食の需要などを探るため、主要な小売店を調査しましたので、それぞれの特徴をご紹介します。

【一般消費者が利用するスーパーマーケット「EDEKA」】
ドイツ国内大手のスーパーマーケットチェーンで複数の業態で事業展開しています。
 
・野菜は梱包のない状態で陳列され計り売り。野菜以外もプラスティックの梱包は削減され、紙や瓶などが多い。
・アーモンドミルクや豆乳など代替飲料コーナーが広く、種類が豊富。
・オーガニック製品(BIO)は様々なカテゴリに含まれており、特に肉や肉加工品にはBIOやプラントベース製品が取り揃えられている。
・寿司のテイクアウトコーナーがスーパーで定番化していて、日本食品のコーナーでは、米、醤油、味噌、寿司セットなどが人気。

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【世界展開、業務用スーパーマーケット「METRO」】
ドイツ最大規模の小売企業グループ。中心業態の「METRO CASH & CARRY」は飲食店や小売業者向けの会員制ホールセールストアで、ドイツのほかヨーロッパとアジアに約670店を展開しています。
 
・日本食は醤油、照り焼きソースなどの調味料や、ラーメンスープ、日本酒などの取扱いがある。
・水産品は特に冷凍品が多く、さらに鮮魚コーナーもある。

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【食品トレンドが集まるオーガニックスーパー「Alnatura Super Natur Markt」】
オーガニック食品に特化した食品小売業チェーンで、健康的でサスティナブルな食品と商品で自社ブランドも提供しています。
 
・特定の客層だけでなく、一般的なスーパーとしてどんな客層も気軽に利用している。
・食品だけでなく化粧品や洗剤などの種類も豊富。
・日本やアジア食品も充実し、日本企業が製造している味噌が売られていた。

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【日本とドイツを繋ぐ「リトル東京」の日本食品店】
「リトル東京」として知られるインマーマン通りには日本食材店やレストランはもちろん、日本の本屋や雑貨屋など数多くの小売店が集まっています。

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・現地の若い客層に人気で、他都市からの利用客も多い。
・醤油や味噌などの調味料が豊富で、大手メーカーだけでなく、中小企業の製品も揃っている。
・お弁当やお惣菜、おにぎりなどのテイクアウト商品も人気。

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ドイツで活躍する日本人のプロフェッショナル ~インタビュー特集~

【①イートイン設備のある日本食品小売店】
プロフィール:現地在住日本人が多く住む閑静な住宅街に位置し、イートインコーナーではおにぎりや、巻き寿司、からあげ、焼きそばなど、多彩な日本料理を手軽に楽しむことができます。

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現地の方の利用が多いこちらのお店では、どんな日本食に人気がありますか?
 学生が多いため、おにぎりが人気です。お惣菜の具材はベジタリアンの方にもご利用いただけるようにメニューを工夫しています。買い物ができるコーナーでは、特に調味料がよく売れています。
 
今後、北海道の食品をさらに取り入れるとしたらどんな課題がありますか?
 何か新しい商品を取り入れるには、北海道の食品だけに関わらず、その商品をいかにアピールするかが重要になります。商品の説明を求められるケースが多く、いかにスタッフが上手く説明できるかが認知や販売に繋がる鍵となりますので、メーカー側からできるだけ多くの情報を提供してもらえることで私たちも販売アピールがしやすくなります。

【②ラーメン店専門、日本食品の卸し業者】
プロフィール:日本食材の卸業と共に、お弁当の屋台(フードトラック)も経営されています。手頃な価格で美味しい料理を提供し、質と量のバランスが絶妙なお弁当メニューが揃っています。

20年以上のドイツ在住で、現在日本食への関心や需要は増加していると感じますか?
間違いなく増加しています。大味と言われるドイツ人の味覚も近年では舌が肥えて、日本食の味も理解されるようになりました。特に寿司とラーメンはかなりの人気です。
 
ラーメンはどのような味に人気がありますか?
特に人気があるのは味噌ラーメン、そして担々麺です。豚骨はヨーロッパの人から見る健康面から、あまりポジティブなイメージはありません。近年では鶏ベースやヴィーガンなどの人気が上がっているのも健康ブームが要因です。
 
北海道及び札幌の食品をPRする上でアドバイスはありますか?
北海道の食品ならスープカレーのようなはっきりした味が、ヨーロッパの人に受け入れられやすいです。「北海道」や「札幌」として特産品を売り込むなら、商品名やメニュー名自体に地名を入れて「Sapporo 〇〇」とまとめて覚えてもらう方法がインパクトに繋がると思います。

【③日本食飲食店・居酒屋】
プロフィール:地元の顧客も多く、日本の味を基盤にしつつもヨーロッパの人々が求める日本食を意識したメニュー展開でリピーターにも喜ばれています。
 
どのような日本食品が現地で人気ですか?
ラーメンブームは続いています。さらに欧州の多くの人が照り焼きソースの風味を好むという傾向もあって、焼き鳥なども需要も増加しています。
 
レストランの人気メニューを教えてください
寿司は非常に人気で、日本とは異なるスタイルですが、こちらでは定番のカルフォルニアロールなども人気メニューのひとつです。当店で提供している日本のカレーの味も好評です。ただし、具材がすべてカレールーに溶け込んでいるため、「具材は入っていないの?」と質問を受けたこともあり、トッピングなどで、食材の存在を分かりやすく示す工夫が必要だと感じます。

【④日本食飲食店・ファインダイニング】
プロフィール:ミュシュランを獲得したデュッセルドルフの老舗日本食飲食店。和食に欧州の食文化を取り込むことで、世界に認められた贅沢な日本食を提供しています。
 
ヨーロッパの人に日本食を提供するときに意識していることはありますか?
当初、日本の料亭の味をそのまま提供しても、現地の人には受け入れられませんでした。特にドイツでは塩味や酸味が好まれ、食事には香りを楽しむ傾向がありますが、強い香りは日本食の良さを一瞬で消してしまうことがあり、その上で香りをうまく表現するバランスを見つけることが重要でした。そして食事を出すときはどこの地域で取れた食材かを説明しています。
 
北海道及び札幌の食品の取り扱いにおいて、現地での障壁や課題は何だと思いますか?
現状、展示会などで欲しい日本食品を見つけても、まだ実際にはEU輸入の準備が整っておらず、購入に繋げられないケースがあり残念です。EU規制をクリアにすることや良いディストリビューターを見つけていただくことで、今後良い商品をEUでも購入できるようになるのを期待しています。

ドイツでの視察及びヒアリングを終えて

今回の市場調査により日本食人気の実態は明らかになったものの、「北海道」や「札幌」に対する認知度はアジア圏に比べて低いことが見受けられました。興味深いことに、ドイツではかぼちゃの品種に「Hokkaido(ホッカイド)」という名前がつけられていることも話題となりました。

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欧州では商品の販売において、具体的にどういう点が優れているのか、その良さや特徴をストーリーとしてしっかりと表現することが重要です。そして商品の利点を分かりやすく、詳しく説明したパッケージで消費者に伝えていく必要があります。
また、肉が中心の食事が一般的である欧州で、健康意識や動物福祉の観点からも、プラントベース食品が注目されています。極端なヴィーガン主義ではなく、一般の人々が日々の食事にヴィーガン料理を取り入れることが増え、今後、植物性の食品は多くの可能性を秘めていると考えられます。
さらに、賞味期限についても日本のイメージとは異なり、「期限が長い=商品が古い」という概念は無いようです。賞味期限が長いことに対するネガティブなイメージはなく、最低でも1年はある方が販売しやすいという意見もありました。

海外展開セミナーを終えて

今回の「海外展開セミナー」には、アワベスコミュニティ以外の多くの事業者の方も熱心に参加いただけました。この交流が新たなビジネス機会や革新的なアイデアの芽生えに繋がることを期待しています。そしてアワベスコミュニティのイベントを通じ、EU市場に進出するための可能性や展開の戦略についての情報が広がったことで、EUに興味を抱く事業者が増えるきっかけとなりました。
 
今後も引き続き、海外展開のための様々な取組を実施していく予定です。来年度は、今回の経験を踏まえて、テスト販売や商談などの具体的な機会提供につなげていく計画です。是非とも皆さまのコミュニティや勉強会などへのご参加をお待ちしております。
 
食産業振興課では、このようなEU圏進出を目指す道内事業者の支援だけでなく、『海外市場オリジナルレポートの提供』『貿易情報の提供』『海外バイヤーとの商談会』などの海外展開支援も実施しています。どうぞお気軽にご相談ください。

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